木曽の厳しい自然が育んだ
神社仏閣、仏像製作のための伝統素材
昔から、神社仏閣などの歴史的建造物や仏像、漆器などの伝統工芸品を作る特別な材料として重用されてきた檜。冬の大雪に寝かされては起き上がり、300年という長い歳月を重ねて成長してきた檜の細やかで美しい木目は、目が詰まっているほど狂いが少ないとされ、それぞれ違う木目を吟味しながら切り出していくと、1本の檜からとれる建築材料はほんのわずか。それほど貴重な檜を、日本人は昔から大切に使ってきました。
最近では、檜に含まれる芳香性物質「フィトンチッド」の殺菌・防虫効果、森林浴効果、リラックス効果、防腐・防湿効果、消臭・脱臭効果などの効果効能に注目が集まり、風呂用品をはじめ、まな板などの台所用品・生活用品にも活用されています。
デザインコンセプト
世界中の風呂を調べ尽くした研究者は、「日本の檜風呂には、人を癒す力がある」と言った。ロスにある高級会員制のリラクゼーション施設では檜風呂が採用されている。現代の風呂には、身体を洗えること以外に、「癒し」の機能が必要になってきているようだ。確かに日本人の風呂との付き合い方は独特で、昔から湯につかり、身体と心を癒してきた。しかし最近では、その文化をベースにしながらも合理性などを考慮し、日本の風呂も様変わりしている。今回はそんな状況を鑑みて、日本の文化である「檜の風呂」を新しい時代にマッチするよう提案したい。300年かけて育った檜は1000年の建築にも採用され、地球環境に適した素材である。従来の木のもつ柔らかさを最大限にアピールし、思わず触れたくなるようなものを目指した。これを実現するための木曽の材木屋さんの協力、桶屋さんの技術と知恵にただひたすらに感謝である。
職人の経験と勘が作り出す美しいカタチ
「こういうものを作りたい」とイメージすることがデザイナーの仕事なら、イメージしたものに実物をいかに近づけられるかが職人の仕事。そのやりとりを何度も何度も重ねながら、檜風呂は作られました。 「木は年輪の形、温度や湿度に対応して動こうとします。どんなに工学に基づいた作業を施そうとも、人間の考えたちょっとした知恵だけでは、300年生きてきた木の動きを止めることはなかなか出来ません。難しかったのは、三次元の部材を組み上げる作業と、ステンレス製のタガを部材の中に通して締め上げる作業の2点。詳しくは話せませんが、せっかくの画期的なデザインが壊れないように、かつ各パーツのつなぎ目に隙間ができたりしないよう発想を転換した技法で臨みました」(桶数・伊藤今朝雄)
伊藤 今朝雄
桶職人/桶数
[プロフィール]
1975年、父伊藤数馬氏の元へ桶職人の弟子として入門し、修行に入る。長野県卓越技能者(現代の名工)の表彰を2005年に受け、現在日本を代表する桶職人のひとりとして精力的に活動している。